ふとした瞬間に耳が詰まったように感じたり、周囲の音が遠くに感じたりすることはありませんか。まるで水の中にいるかのように自分の声が響いたり、音がくぐもって聞こえることもあるでしょう。これらの症状は一時的なこともありますが、なかには放置することで悪化する病気が隠れている場合もあります。耳の違和感や聞こえの変化にはさまざまな原因が考えられ、早期に耳鼻咽喉科での診断を受けることが重要です。
本記事では、耳が詰まった感じがする原因として考えられる代表的な疾患について解説します。
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耳が詰まったように感じる原因として、多く見られるのが「耳管機能障害」です。耳管は耳と鼻をつなぐ管で、気圧の調整や中耳の換気に関わる重要な働きを担っています。この耳管がうまく開閉できなくなると、耳の中の圧力が調整できなくなり、閉塞感や音のこもり、耳鳴りといった症状が現れます。特に風邪をひいたときやアレルギー性鼻炎で鼻づまりがあると、耳管にも影響が及びやすくなります。症状が軽度であれば自然に改善することもありますが、繰り返す場合には耳鼻科での検査が推奨されます。
耳の聞こえにくさに加え、痛みや発熱が伴う場合は「急性中耳炎」の可能性があります。細菌やウイルスが中耳に感染し、炎症や膿が溜まることで鼓膜の動きが悪くなり、音の伝達に支障をきたします。特に小さな子どもに多く見られますが、大人でも発症することがあります。
また、慢性的に中耳に液体が溜まり続ける「滲出性中耳炎」も耳が詰まったような感覚や聞こえの低下を招く要因です。これらの疾患は、耳の状態を観察する鼓膜鏡検査や聴力検査で確認され、症状に応じて抗生物質や通気処置などの治療が行われます。
思いのほか多いのが、「耳垢の詰まり」です。外耳道に耳垢が溜まりすぎて音の通り道をふさいでしまうと、音が聞こえにくくなるだけでなく、耳が詰まったような違和感を強く感じます。綿棒で奥に押し込んでしまうことも原因となりやすく、自分では取り除けないケースもあります。
耳鼻科で専用の器具や吸引器を使えば安全に除去できるため、違和感が長引くようであれば無理に自分で触らず、専門医の診察を受けることが大切です。
突然耳の聞こえが悪くなった、耳が詰まったような感覚がある、という場合には「突発性難聴」の可能性も否定できません。この病気は文字通り、ある日突然に発症するもので、片側の耳にのみ生じることが多いです。原因ははっきりしていませんが、ストレスやウイルス感染、内耳の循環障害などが関与していると考えられています。発症後、できるだけ早期に治療を開始することが予後に大きく関わるため、違和感が強くなった場合はすぐに耳鼻科を受診することが推奨されます。
耳掃除のしすぎやプール後の水分残りなどで耳の入り口が炎症を起こす「外耳炎」も、耳の閉塞感や痛みの原因となります。耳が詰まったような違和感に加え、触ると痛む、耳だれが出るといった症状があれば外耳炎の可能性があります。軽度であれば点耳薬や外用薬で治療できますが、腫れがひどくなると外耳道がふさがり、聞こえが悪くなることもあります。市販薬などで自己判断せず、耳鼻科での正確な診断を受けることが重要です。
耳の奥にある内耳や、そこから脳へつながる聴神経に異常がある場合にも、聞こえの低下や詰まり感が生じることがあります。たとえば「メニエール病」は、内耳にリンパ液がたまることで耳の閉塞感や耳鳴り、めまいなどを引き起こす病気です。また、聴神経腫瘍などの比較的まれな病気が原因となっていることもあるため、症状が長引く、あるいは徐々に悪化している場合には画像検査など精密な診断が必要となります。
耳が詰まった感じがするというのは、単なる一過性の不調から重大な病気まで幅広い原因が考えられる症状です。日常生活の中で生じる一時的な違和感であっても、繰り返したり長引いたりするようであれば、自己判断せず耳鼻科での診察を受けることが重要です。とくに、聞こえにくさや耳鳴り、めまいなどが併発している場合は、早期の治療がその後の聴力の回復を左右する可能性もあります。少しでも「いつもと違う」と感じたら、遠慮せず専門医に相談してください。