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眠っているときに響く「いびき」は、多くの人にとって身近な悩みのひとつです。単なる生活習慣の問題と受け止められることもありますが、実際には体の構造や隠れた疾患が関係している場合があります。いびきが続くと睡眠の質が低下し、日中の集中力や体調に悪影響を及ぼすことも少なくありません。その背景に、「アレルギー性鼻炎」が関わっているケースがあるのをご存じでしょうか。鼻づまりや鼻水が慢性的に起こることで呼吸が妨げられ、結果としていびきを引き起こします。
本記事では、いびきとアレルギー性鼻炎の関係について解説します。いびきや鼻炎でお悩みの方にとって、少しでもお役になればと思います。
アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニ、ハウスダスト、ペットの毛などアレルゲンに対する免疫反応が鼻粘膜の炎症を引き起こす病気です。代表的な症状として、鼻水・鼻づまり・くしゃみが挙げられます。アレルギー性鼻炎の炎症によって鼻腔の粘膜が腫れると空気の通り道が狭くなり、鼻からの呼吸がスムーズにできなくなります。その結果、鼻呼吸が困難になると口呼吸に頼るようになり、舌や軟口蓋が気道を塞いで「いびき」が発生します。
慢性的な鼻づまりは、単なる不快感にとどまらず、いびきや睡眠障害を引き起こす要因になります。季節性の花粉症に加えて、通年性の鼻炎を抱える方も多く、日常生活の快適さや睡眠の質に大きく影響を及ぼす疾患です。
いびきは、睡眠中に上気道が狭くなり、通過する空気が周囲の粘膜や組織を振動させることで生じる音です。肥満やアルコール、加齢による筋肉の緩みなども原因として知られていますが、鼻づまりによる口呼吸も要因のひとつです。いびきを放置すると単なる睡眠の妨げにとどまらず、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める可能性があります。そのため、「よくあること」と軽視せず、健康のサインとしてとらえることが大切です。
アレルギー性鼻炎によって鼻腔の粘膜が炎症で腫れると、空気の通り道が狭まり、鼻からの呼吸がしづらくなります。そのため鼻呼吸が難しくなり、自然と口呼吸に頼るようになります。口呼吸になると舌や軟口蓋が気道を塞ぎやすくなり、いびきが生じます。さらに後鼻漏によって喉に粘液が溜まると呼吸の抵抗が増し、いびきを悪化させる要因となります。
また、夜間は血流が増えることで鼻粘膜の腫れが強くなりやすいため、いびきが夜に悪化するのも特徴です。こうした仕組みから、アレルギー性鼻炎は睡眠時の呼吸を大きく妨げ、いびきの原因として見過ごせない存在といえるでしょう。
アレルギー性鼻炎には、特定の時期だけ症状が出る「季節性」と、一年を通して症状が続く「通年性」があります。季節性ではスギやヒノキの花粉飛散期に鼻づまりが悪化し、短期間でいびきが強まります。通年性ではダニやハウスダスト、ペットの毛が原因となり、常に鼻呼吸が妨げられるためいびきが慢性化する傾向があります。
特に通年性の人は症状に慣れてしまうケースが多く、睡眠障害に気付かないまま放置する危険があります。季節性と通年性が重なる場合は一年のほとんどで睡眠が妨げられ、日中の集中力や学習、仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすため注意が必要です。
アレルギー性鼻炎が原因で口呼吸になると、いびきだけでなく「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」につながる可能性があります。SASは睡眠中に気道が塞がり、数秒から数十秒呼吸が止まる病気です。
無呼吸が繰り返されると脳や体に十分な酸素が届かず、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞など重大な病気のリスクを高めます。アレルギー性鼻炎の人はもともと鼻呼吸が妨げられているため、SASのリスクが高いことが分かっています。朝の頭痛や強い眠気、熟睡感がないといった症状がある人は、単なる鼻炎ではなくSASを合併している可能性があり、早めの検査と治療が求められます。
アレルギー性鼻炎によるいびきを防ぐには、生活環境の整備が必要です。寝室は清潔に保ち、カーペットやカーテンはこまめに洗濯し、布団には防ダニカバーを使用します。加湿器で適度な湿度を維持し、空気清浄機でアレルゲンを除去することも有効です。
生活習慣では、寝酒を避けることが大切です。アルコールは喉の筋肉を緩めて気道を狭め、いびきを悪化させます。肥満も大きな要因であるため、食生活の改善や適度な運動を心がけることが重要です。さらに、横向きで眠る習慣をつけると舌が喉に落ち込みにくくなり、いびきを軽減できます。小さな習慣の積み重ねが、いびき予防につながります。
症状が重く日常生活に支障をきたす場合は、医学的治療が必要です。抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド薬で炎症を抑え、鼻腔の通りを改善します。花粉症では舌下免疫療法が有効で、数年かけてアレルギー反応を根本から軽減できます。鼻中隔湾曲や下甲介肥大といった構造的な問題がある場合には手術が検討されます。レーザーやラジオ波による粘膜治療は侵襲が少なく、日帰りで受けられる治療も増えています。いびきが続く場合は自己判断せず、耳鼻咽喉科や睡眠外来で診察を受けることが大切です。
子どものいびきは大人以上に注意が必要です。アレルギー性鼻炎による鼻づまりが長引くと、口呼吸が習慣化し、歯並びや顎の発育に悪影響を及ぼします。また、酸素不足が成長ホルモンの分泌を妨げ、身長や体の発達に影響を与える可能性があります。
さらに、集中力や学習能力の低下も報告されており、学業成績に直結することがあります。原因がアレルギー性鼻炎だけでなく、アデノイドや扁桃肥大であるケースもあり、耳鼻科での精密な診断が必要です。子どものいびきを軽視せず、早めに相談することで健全な成長と健康な睡眠を守ることができます。